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ショートストーリー『初夢はお稲荷様』

カテゴリ: 雑談  

「ほれ、起きんかい、来てやったぞ」
「おッ…俺好みのッ、若干ロリっぽいのに爆乳で、立派な狐耳と切れ長の目、着物なのか巫女服なのかよくわかんないけど和風の衣装を纏った、お稲荷様の美少女擬人化来たァーッ!」
「…詳しい解説ありがとうな」

 元旦、久しぶりに実家に戻っていた俺は地元を懐かしんで散歩していた。近所の神社や竹藪を歩き、少なからず変化した景色を楽しみながらぶらぶらと歩いてふと振り向いた先に、小さな赤い鳥居が見えた。近づいてみると、鳥居に掲げられたしめ縄と紙垂の新しさだけが目立つなか、枯葉に埋もれきった20段ほどの石階段が見えてくる。誰も訪れる気配のないその階段を登れば、窓も壁も破れた物置小屋、そして2本の赤松に挟まれ建つ小さな社がそこにあった。どうやら年の瀬に枝落としだけはされたのだろう、赤松の枝がその脇に積まれ枝の断面に樹液が滲み出ている。社にも小屋にも小さな蛍光灯がつながっていたが、スイッチを操作しても点くことはない。古くなり若干傾いた社の中は昼間なのに薄暗く、祀ってあるはずの像も見えない。元々それほど信仰深くもない俺がこんな朽ちた社に長居する理由などないはずなのだが、昨夜見てきた参拝者で賑わう大きな神社の様子を思い出すと、おそらく新年になっても誰一人訪れていないのであろうお稲荷様が少し不憫に思えた。切り落とされた枝を手に階段まで戻った俺は、吹き溜まっていた枯葉を枝の箒で掃き集め、枯れた草むらにまとめて投げ込んだ。

「…と、そんな御主の様子を社から見ておっての。ただでさえ珍しい参拝客が掃除までして帰りおったものじゃから、さすがに気になっての」
「どんだけ詳しく見てたんですか…いや、しかしあれは気まぐれでやっただけで、そんなわざわざ褒められるような事では」
「まあそうじゃろうな! 賽銭の音で目が覚めた時は、久しぶりに信仰深い者が来たかと思うて喜んだがの! 鈴は阿保のように鳴らしまくるわ、手を合わせて深々と何を祈るかと思えば「20年前にここの境内でやってたミニ四駆大会で2位になれたのはお稲荷様のおかげです、ありがとうございました」じゃの今更過ぎる感謝をしてくるわ、しかも御主、枯葉掃除しながら「意外と掃除してる俺のことお稲荷様が見ててお礼に来てくれたりして! もちろんエロい感じの」とか考えとったじゃろ! 久しく途絶えておった参拝客がこれでは…まったく妾の信仰も落ちたもんじゃ…トホホ」
「なんかすいません…でもこんな可愛らしいお稲荷様でしたら大歓迎ですよ」
「それじゃ! 何で耳! 立派な狐耳バーンとこれ! お稲荷さんと狐ごちゃ混ぜにしとりゃせんか!? 御主の妄想しとる姿は眷属の白狐の姿じゃ! お稲荷様とゆうのは本来は稲荷大神様とゆうてな、まるっきり別の姿じゃ!」
「じゃあその素晴らしい姿は、俺のイメージが作り出したものってことですか! なんという…俺の妄想力すげえ…」
「阿保め、妾の本来の姿はこんなものではないぞ。まったく何じゃこの華奢な身体つきは。もっとこうな…豊満な四肢に色気も漂ってだな…下手に詳しく描写するとちゃんと調べてないのバレるからやめておくがな、まあしかし乳だけは存分にたわわで良いわな」

自らの乳房を両腕で持ち上げながら、満足気な表情でお稲荷様がつぶやく。

「…なんか妙な独白が混ざってましたけど、なるほど本当のお稲荷様は熟女系でしたか。その身体ではご不満ですか?」
「姿形にこだわってはおらぬわ。この狐耳は論外じゃがな。それよりも御主、この姿が理想なのじゃろう? 願ったり適ったりなのじゃろう? 飛びかかって襲ったりはせんのかの?」
「いやァ見た目は確かに最高ですけど、なんというか言動が年寄りくさいのが、その…ねェ。しかも勝手に人の夢の中に来てるんですし」
「無礼極まりないの! 御主が願ったからこうして来てみれば!」
「本当にそれだけですか来た理由? 馬乗りになって顔も近づけて言うことですかァ?」

馬乗りになるどころか、そのまま腰を微妙に前後させて、俺の股間に恥骨を押し付けてくる動作がずっと止まらないお稲荷様。

「う…なんじゃその目は…いや正直な、本当~~~~に暇だったし訪ねる者もおらぬし、まあ浮かれておったのもあってな、御主もどうせ暇で立ち寄ったのじゃろう? ならば気持ちわかるじゃろう? 久々に誰かと話してみたいと思うてなァ…」
「な、なんですか急にしおらしくなっちゃって、そんなトコ見せられたらグッと来ちゃうじゃないですか、抱き締めちゃいますよ」
「そうじゃろ!? もう我慢も限界じゃろ? 新年早々しっぽり姫はじめとイキたいのじゃろう!? フヒヒwww 妾も御主に呼びかけた時からすでに滝濡れでの、ほれ早う抱いてくりゃれwww♡」
「ダメだこのお稲荷様アホだけどサイコーwww がばァッ」
「あーれーw♡!  あ、それとみによんくのぱわぁあっぷしたのは御主の言った通りじゃからの、重々ありがたく思って今後も定期的に詣れよ」
「…なんか萎えた」
「おいィーーーー!?」

肝心の合体シーンが見られず目が覚めたので来年のお稲荷様に期待だ。

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 2016_01_03

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